それは、きっと、うれしいな、って。
Φ
少年は暗い路地を歩いていた。
何故その路地を歩いているのかさえ、その少年には不確かだった。虚ろな眼差し。軽く開いた口から垂れた涎。寝巻きで裸足のその少年は夜の路地を徘徊する。
暫くすると、明かりが灯った電灯に辿り付いた。一息付きながら寄りかかると、その電灯は無機質な冷徹さを露わにし、少年は後ずさった。そして、切れかかった電球の中の小さな虫が這う音が聴こえるようなその静寂の中に、ある一筋の音を知覚した。
横から近づいてくるそれに目を向けられずに立ち尽くしていると、ヒタヒタ、ヒタヒタと素足が道路を擦る音が、段々と大きくなってゆく。その音が最大になった時、急に止み、また元の静けさに回帰した。
だが少年の、その開いていた口が歪み、醜い孤が描かれる。笑みではない。恐怖に引きつった顔がそこにはあった。少年には確かに背後に人の気配を感じるのであった。
振り向いてしまえば、全てがわかる。
そう分かっていても、振り向くことなど到底できない。だが、この硬直した状態に誰よりも耐えられなかったのは、他でもない少年であった。
彼は生唾を飲み込むと、一気に背後に振り返った。
そこにはなにもなかった。
胸をなでおろす。だが目を凝らせば、確かになにか光るものが、電灯の明かりの届かない暗闇に、いた。
赤い切れ目のようなその光は、まるで目のような形をしていた。それは、少年に段々と近づき、そしてーーー。
Φ
ここで言ってた邪鬼眼がどうたら。
中二全開!